なおの心象風景

詩のような散文のようななにかを書きつけています

回復

何かの因果でこの身体を与えられ、ここへ生れ落ちる
いったいどういった理由で?
我々は問いかける
我々は記憶をすべて忘れて生まれてくる
精神を司るなにか大きな意志、自然、
あるいは宗教はそれを創造主、神様と言ったりする


ひとは生まれて生きてそして死ぬ
誰もが同じであるはずなのに、どうしてこんなに違うように見えるんだろう
どうして私はいつもこう
いつもここに帰ってくる
人はそれを現実と言ったり、悪夢と言ったりする


精神の住処である身体
どうあがいたって
どんな本を読んだって
帰ってくるのはいつもここ
この精神しかないのだった


しかしもう私は悲観しない
この精神を
あらゆることを悲観するやっかいな精神が宿ってはいるけれども
そのこと自体は悲観しない
精神があることはありがたいことです


このように言葉を使って考えられるのは良いことです
たとえ言葉が人間に意味を与え価値を与え傲慢になってしまったとしても
また言葉で回復できる
どんなに言葉が失われようと
今こうして使っている日本語がまだ残っている
ここからまた自分の傷をも先祖の傷をも回復できる


あなたは何を失ってきたんですか
何を捨て去り、故郷を出できたんですか
私は知りたい
なぜなら私は一人では存在できなかったからです
あなたがいて私がいるからです
私が探し求めているものがあなたの中にあるかもしれないからです


どうして
なぜわたしたちこんなにばらばら


でもまたきっと言葉で取り戻せる
ばらばらになってしまった言葉やその背後に隠れた影を拾い集めて
紡ぎ合わせて
我々はある空気の運動によって
思い出す方法を忘れてしまったので
上手く生きるやり方がちょっとわからないだけ


上手くしようとしなくていい
変えられないことはただそれを愛するだけ
何回も何回も愛しなおすだけ
そうやって私とあなたとを回復していく